はじめに:妊娠中の風疹って大丈夫なの?
妊娠中に風疹(ふうしん)にかかると、赤ちゃんに重大な影響を及ぼす可能性があります。
「妊娠してから慌てて調べた」という方も多いのですが、実は風疹の予防は妊娠前からの対策がとても大切です。
この記事では、産科診療ガイドラインや厚生労働省の情報をもとに、妊娠中の風疹感染とその予防についてわかりやすく解説します。
風疹とは?どんな症状が出るの?
風疹は風疹ウイルスによって起こる感染症で、飛沫感染(くしゃみや咳)で広がります。
免疫のない集団では、1人から5〜7人に感染するほど感染力が強いとされています。
多くの人は無症状か軽い風邪のような症状で済みますが、有症状の場合は以下のような症状が現れます:
- 微熱、のどの痛み、咳、頭痛など風邪に似た症状
- 顔から始まり全身に広がる赤い発疹(通常3日ほどで消える)
- 首や耳の後ろのリンパ節の腫れ
一見すると軽い病気のようですが、妊婦さんが感染すると話は別です。
妊婦が風疹にかかるとどうなるの?
妊娠中、特に妊娠20週以前に風疹に感染すると、胎児に深刻な影響を与える可能性があります。
これは「先天性風疹症候群(CRS)」と呼ばれるもので、以下のような障害が報告されています:
- 白内障・緑内障などの眼の異常
- 先天性心疾患
- 難聴(感音性難聴)
- 小頭症・発達障害など
また、流産や死産、胎児発育不全(FGR)のリスクも高まるとされており、非常に注意が必要です。
風疹感染の診断方法は?
妊娠中に風疹感染が疑われる場合は、血液検査で以下の2つを調べます:
- 風疹HI抗体価
- 風疹特異的IgM抗体価
HI抗体価が1〜2週間で4倍以上上昇し、IgMが陽性であれば「感染の可能性が高い」と判断されます。
ただし、母体に感染があっても胎児に必ず感染するわけではありません。
胎児感染の診断には羊水検査などのウイルス遺伝子検査が必要です。
妊娠中の風疹予防の基本は?
妊娠中は風疹ワクチン(生ワクチン)が接種できないため、感染予防が最優先となります。
- 不要不急の外出を避ける
- 流行地域・人混みを避ける
- 同居する家族もワクチン接種を検討する
- マスク・手洗い・うがいなどの基本的な感染対策を行う
また、妊娠初期に抗体価を確認しておくことも非常に重要です。
妊活・不妊治療中の方こそ「風疹対策」を
妊娠が判明してからではワクチン接種はできません。
そのため、妊活中や不妊治療中の方には、事前の抗体検査とワクチン接種がとても大切です。
- 妊娠を希望する女性は、HI抗体価が16倍以下であれば接種を検討
- 妊娠中に感染してしまった場合、有効な胎児治療法はありません
現在多くの自治体で妊娠を希望する女性を対象に抗体検査を無料で提供しており、風疹抗体がない場合はMR(麻疹風疹混合)ワクチンの接種を推奨しています。
まとめ:赤ちゃんを守るために、まず「知ること」から
風疹は、妊婦さん自身には軽症でも、赤ちゃんにとっては一生を左右する深刻な影響をもたらす感染症です。
妊娠中はワクチン接種ができないからこそ、妊活前の備えがとても大切。
抗体の有無を知り、必要があればパートナーや家族と一緒に予防接種を受けましょう。
安心して赤ちゃんを迎えるために、「まずは知って、できることから始める」。
それが、風疹から家族を守る一歩です。
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