「張りがありますね」と言われたけど…それって大丈夫?
妊婦健診や外来で「おなか、ちょっと張ってますね」と言われて、不安になったことはありませんか?
でも、「張り」っていったい何? どうなったら危険?
そんな疑問を持つ妊婦さんはとても多いです。
この記事では、妊娠中のおなかの張りとは何か、どんなときに注意が必要か、そして日常生活で気をつけたいことについて、医師の視点からやさしくお伝えします。
おなかの「張り」ってどういうこと?
妊娠中に「張り」と言われるのは、子宮が一時的に収縮して硬くなることを指します。
普段はやわらかいおなかが、キューっと固くなる感じで、触ってみると「石のように硬い」と感じることも。張りには痛みが伴わないことも多く、気づかない方もいます。
この張りは、すべてが異常というわけではありません。妊娠中期以降の子宮は、自然に時々収縮することがあり、これは「生理的な張り(Braxton-Hicks収縮)」と呼ばれます。
生理的な張りと注意が必要な張りの違い
生理的な張りの特徴:
- 不規則で短時間
- 痛みがない or 軽い
- 横になると治る
- 回数が1日数回程度と少ない
注意が必要な張りの特徴:
- 規則的に繰り返す(10分おきなど)
- 張りがどんどん強くなる
- 痛みを伴う(生理痛のような痛み)
- 出血、破水感を伴う
- 胎動が少ない
切迫早産ってどんな状態?
「切迫早産」とは、妊娠22週0日から36週6日までの間に、規則的な子宮収縮と子宮頸管の開大が見られる状態です。
- 子宮口が2cm以上開いている
- 子宮頸管長が短縮している(経腟エコーで確認)
- 同時に破水や出血がある場合も
日本の早産率はおよそ6%と国際的には低いですが、以下のような方はリスクが高くなるため注意が必要です。
リスク因子:
- 過去の早産歴
- 子宮頸管を切除した既往(円錐切除)
- 双子などの多胎妊娠
- 子宮頸管長が短いと指摘されている
- 若年妊娠、高齢妊娠、喫煙、無症候性細菌尿
こんなときは外来を受診しましょう
以下のような症状があるときは、すぐにかかりつけの産婦人科へ相談してください。
- おなかの張りが1時間に3回以上ある
- 張りに痛みを伴う
- 出血や破水感がある
- 胎動が減ったように感じる
- なんとなく不安で落ち着かない
張りを悪化させないために、生活で気をつけたいこと
張りが続いているときは、まずは横になって安静にすることが大切です。
そのうえで、以下のような行動は控えるようにしましょう:
- 長時間の立ち仕事・移動
- 重い荷物の持ち上げ
- 階段の上り下りの繰り返し
- 便秘の放置
💡「安静=ずっとベッドにいること」ではありません。
実際、ベッド上安静による早産予防効果は認められていません。
必要以上に寝たきりになる必要はなく、医師の指示に従って「無理しない生活」を心がけることが大切です。
不安なときは、一人で悩まず外来で相談を
妊娠中のおなかの張りは、多くの方が感じる、よくある変化のひとつです。
でも、「この張りは大丈夫なのかな?」と不安になることもありますよね。
そんなときは、ひとりで悩まずに、気になることがあれば外来で相談してみてください。
「大丈夫ですよ」と言ってもらえたら、きっと安心できると思いますし、何かあった場合も早めに対応できます。
張りとうまく付き合いながら、安心して毎日を過ごしていけますように。
知っておくと安心:外来で相談できる制度もあります
妊娠中に「張りが気になる」「少し休みたい」と思っても、職場ではなかなか言い出しづらい…そんなときに使える制度があります。
それが、母性健康管理指導事項連絡カード(通称:母健連絡カード)です。
このカードは、妊娠中の体調に応じて通勤緩和や休憩、勤務時間の短縮などを職場に伝えるために、医師が記載する公式な文書です。
たとえば「おなかの張りが増えてきて、立ち仕事がつらい」「休憩時間を確保したい」といったことがあれば、遠慮せずに外来で相談してみてください。
必要に応じて医師がカードを作成し、職場に医学的な配慮を求めるための根拠となります。
▶ 制度の詳細は厚生労働省の公式資料も参考になります。
コメント